設計者としていつも気になるのが、二世帯住宅に使える有効面積の少なさです。たとえ親が土地を持っていたとしても、将来二世帯住宅を前提にした土地だったわけではありません。特に部心部や都市郊外地域では、もともと二世帯の家族が生活する広さの土地面積しかないのがほとんどです。その土地に今度は二世帯二家族が住むわけですから、小さな部屋が集まった「うさぎ小屋」と同じ状況が生まれてしまいます。次の事例は、二世帯住宅として設計依頼があったものの、設計を進めた結果、一緒に住むことを断念せざるを得なかったケースです。
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このケースは、親世帯が五十代の夫婦、子世帯が夫婦と子ども二人でした。都心の三二坪の土地に二世帯住宅の建築を希望していました。しかし、リビングルームとキッチンに関して、お互いの意見が相容れなかったのです。親夫婦は、キッチンは狭くても広いリビングを希望していました。一方、息子夫婦は、妻がケーキづくりが好きだったため、キッチンを広く充実させ、かつオープンキッチンにしたいという強い希望を持っていました。リビングルームやキッチンは、家族の個性やこだわりが一番出てくる場所ですから、親子といえども妥協や歩み寄りは難しいものです。無理して二世帯分の広いリビングルームをつくったとしても、二世帯分の家具や物を置けば、結局は狭くなり部屋として機能しないことがわかりました。また、夫婦の寝室などプライベートな空間も狭くせざるを得なくなります。自分たちの希望をどちらも抑えたまま住まいを完成させたとしても、これから子どもの成長期を控えて、親が納得のいかないまま暮らすことは、子どもの教育上良い影響は及ぼさないと判断し、二世帯住宅をあきらめることになりました。